タイトルなし

小学5年生の夏、林間学校がありました。

学校で行うはじめてのお泊り旅行、カレーを作ったりキャンプファイヤーをしたりと
期待に胸を膨らませての参加でした。

当然、先輩から受け継がれている怖い話しもありました。

使っていないバンガローがあって、それは昔林間学校に参加した生徒が、
朝になって首をつって発見されたことがあったもので……。

そんな噂だけでも怖い怖いと盛り上がりながら当日を迎えました。

山の中、おばけの怖さよりも虫への恐怖が先立ちました。

バンガローに荷物を置き、トイレに初めて行った時、蜘蛛の巣だらけ、
虫だらけのトイレは二度と入りたくないと思ったほど、その場に近づきたくない、
それくらい虫がたかっていました。
夜になればなおさらでしょう。

小便器は我慢して使えますが、大便器の方は子供ながらに遠慮したいと、我慢を決め込みました。

夕方を過ぎると天候が悪化。

楽しみにしていたキャンプファイヤーは中止となりました。

そのため食堂でのレクリエーションに変更になり、テンションが上がらなかったのを覚えています。

レクリエーションが終わり、それぞれの班に分かれ皆はバンガローに。

バンガローで過ごす夜というのは刺激的でみんな興奮状態。

怖い話しや、好きな子の話などで盛り上がりました。

しかしそれとは別の恐怖を私たちの班は感じていました。

雨の量が異常だったのです。

当然あまりにひどい暴風雨であれば、バンガローが持たないくらいの悪天候となれば、
鉄筋コンクリートの頑強な食堂へ避難するなど、先生やキャンプ場の管理者が指示したでしょうが、
そんなことは大人になった今だからこそ考えられることで、当時11才そこそこの子供だった私たちは、
このまま雨が強くなればバンガローは破壊され自分たちは死ぬのではないかと本気で考えました。

強くぶつかる雨の音、その量の多さにたゆむバンガローの天はそのうちはちきれるのではないかと思うほどたゆみ、みんなでそのたゆみを押してなるべく天に溜まる水を減らそうと抗いました。

結局はそんな努力にも疲れ、十二時を過ぎるころには寝入っていたのですが、
子供ながらに真剣に怖い体験でした。

気が付けば朝に。天気も回復して雨は嘘のようにすっかり上がっていました。
みんなで荷物を片付け、バンガローの掃除をしている時のこと、
入り口と逆のバンガロー裏の壁になっている布をバサッと開けたところ、
その先にポツンと一軒のバンガローがありました。

それを見て

「えっ!?」

と思ったのです。

なぜならパンフレットに班分けされたバンガローにはそのみつけたバンガローが記載されて
いなかったから。

今回のキャンプでは使われていなかったバンガロー。

しかも班分けの地図にも書かれていなかったバンガロー。

なぜそれがあるのか……。

そう思うと急に怖くなりました。

噂だと思っていたけれど、あのバンガローがもしかしたら誰かが首を吊ったと噂されるバンガローなのではないか……?!

 

これが私が体験した林間学校での怖かった思い出です。

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